役者紹介 ―わ、ふじわ―


アヒルを拾った。

正確には、水たまりから流れてきた。

こんにちは。ふじわです。

主宰さんからブログを書いて欲しいと言われて、何を書こうかと考えていたところ、ちょうどアヒルが流れてきたので、紹介します。

先日の野外稽古は、大豪雨だった。

屋根のあるところへ逃げ込んで、しばらく雨が止むのを待った。

けれど、なかなか止まない。

今日の稽古、どうしよう。

道路には、いつの間にか大きな水たまりができていた。

その水たまりを眺めていたら、向こうから何か黄色いものが流れてきた。

アヒルだった。

黄色くて、丸くて、浮き輪をつけている。

こんな大雨の中を流されてきたというのに、本人は特に困っている様子もなく、真っ黒な目でこちらを見ていた。

どう考えても汚い。

豪雨の水たまりを泳いできたアヒルである。

普通なら拾わない。

でも、可愛かった。

拾った。とりあえず拾った。

どう考えても誰かのものだと思う。

でも、あまりにも堂々と流れてきたので、なんだか私に拾われるためにやってきたような気もした。

もちろん、そんなわけはない。

可愛かったので連れて帰った。

家には「小さくて可愛いものたち」を集めている場所がある。

通称、ちいかわである。

ごめんなさい。
全然馴染んでいない。

もふもふの猫の中に1人だけ黄色いアヒル。

でも、小さくて可愛い。

採用。

こうして我が家の一員になったアヒルは、その後、なぜか稽古場にも連れて歩いている。

家から稽古場へ。
稽古場から家へ。

最近、私はこの子とよく一緒にいる。

そして、あと2人。

最近ずっと一緒にいる女の子たちがいる。

今回の公演で、主宰から託された2人だ。

台本をもらってから、この子たちのことを考えている。

この子はどうしてあんなことを言うんだろう。

何を見ているんだろう。

何が好きなんだろう。

何が嫌いなんだろう。

何が怖いんだろう。

どんなときに寂しくなるんだろう。

知りたいことはたくさんある。

でも、2人はなかなか教えてくれない。

台本を何度も読んで、
稽古場で声にして、
歩いてみて、
誰かの目を見てみる。

そうすると、たまに、

あ、この子、こんな顔するんだ。

と思う瞬間がある。

昨日まで知らなかったこの子を、一つ見つけたような気がして嬉しくなる。

でも、次の日にはまた分からなくなる。

その繰り返しだ。

早くこの人のことを分かってあげたいと思う。

でも、人間一人のことをそんな簡単に「分かった」と言えてしまう方が、よっぽど変なのかもしれない。

私だって21年間私をやっているのに、いまだに私のことがよく分からない。

数週間一緒にいるだけの人間のことなんて、分からなくて当然なのかもしれない。

役を「つくる」という言葉がある。

でも最近、私は役をつくっているというより、育てているような気がしている。

主宰がこの人を生んだ。

名前をつけて、過去をつくって、言葉を与えて、この世界にぽん、と置いた。

その子たちを今、私が託されている。
そして、育てている。

なんだか急に責任重大な気がしてきた。

私の好きなように育てたいわけではない。

こういう子だと決めつけて、私の形に押し込めたくもない。

私を表現するためにこの子を育てたくない。

この子が何を見ているのか。
何を感じているのか。

毎日そばにいて、できるだけたくさん知りたい。

分からなかったら、分からないまま一緒にいたい。

全部理解できなくてもいい。

ただ、この子に寄り添いたい。

本番の日、この人がちゃんと自分の足で舞台の上に立てるように。

それまで私は、この人たちともう少し一緒に暮らしてみようと思う。

鞄の中には、今日もアヒルがいる。

アヒルを一匹。
女の子を二人。

今日も連れて、稽古場へ向かう。

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